更新日:2020/09/12
2019年2月20日、第185回ナイロビ学振セミナーをJSPSナイロビ研究連絡センターにおいて開催しました。講師は、中京大学博士研究員の岡本圭史先生で、テーマ、概要は以下の案内の通りでした。
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第185回学振 ナイロビセミナーのご案内(2019年2月20日水曜日)
テーマ: 妖術の街、悪魔の国、人間の世界 —国民国家の中のオカルト的言説— (使用言語:日本語)
講師: 岡本 圭史 先生
(中京大学心理学研究科 博士研究員)
日時: 2019年2月20日(水) 10:00 ~ 13:00
会場: JSPSナイロビ研究連絡センター 図書室 →アクセスhttps://www.jspsnairobi.org/access
参加資格: 国籍、年齢を問わず、どなたでもご自由にお越しください
概要:
今回のナイロビ学振セミナーには、中京大学心理学研究科の岡本圭史先生をお招きします。
岡本先生は、ケニア沿岸部のドゥルマ社会を対象とした人類学的な調査を継続されています。
今回は、これまでの研究成果をご発表いただくとともに、みなさまからの活発なご意見をうかがう場にできれば、と考えております。
発表内容については、以下の要旨をご参照ください。
要旨:
ケニア海岸地方に、ドゥルマ(Duruma)と呼ばれる人々が住んでいる。ドゥルマの間では、妖術が重要な関心事である。妖術から身を守る主な手段として施術(uganga)がある一方で、近年ではキリスト教徒となる人々も増えつつある。トウモロコシの不作、過度の飲酒、失職、病気、家畜の死など、様々な問題が妖術使いの仕業とされる。妖術への関心は、ドゥルマに限ったことではない。アフリカ諸地域の妖術についての研究は既に豊富であり、また、ナイロビのような都市部でも、妖術は話題となるように見える。妖術使いの他に、悪魔崇拝者と呼ばれる人々も、ドゥルマの間で話題になる。悪魔崇拝者はしばしば妖術使いと類似の存在と語られるが、固有の特徴をも持っている。それは教会に潜む偽のキリスト教徒であり、また、時には外国人と重なり合う。更に、悪魔崇拝者は人体を使って薬品を製造する企業や、事故を起こして人間の血を集める結社としても語られる。人々が、妖術等の脅威に立ち向かおうとすることは確かである。この種の語りは単なる噂話なのか、それとも社会を突き動かす何らかの力なのか。政治家や外国人、教会や大企業が悪魔崇拝者であるかも知れないと人々が考える時、国家や社会の在り方は、何らかの影響を受けるだろうか。本発表では、妖術をめぐる人々の語りを基に、この問題について検討する。また、妖術が「信じられる」時に国家が奇妙な様相を呈するというよりも、妖術言説が国家の不可解さを際立たせるのではないかという点も問題となる。
先生のナイロビ滞在は短く、なかなか得られない貴重な講義の機会となります。
大変有意義な報告となりますので、多数の参加をお待ちしております。
JSPSナイロビ研究連絡センター
センター長 溝口大助
副センター長 稲角暢