年の瀬

更新日:2009/12/30

今年もあと残すところ、今日と明日のみになりました。

当地では例年、12月に入ると学校が休みになり、普段渋滞の激しいナイロビ市内でも徐々に車の通行量が減ってきます。12月も半ばを過ぎると、平日の日中でもビジネス街から人が消えていると実感できるようになり、一方でショッピングセンター周囲などは激しい渋滞に見舞われます。官公庁は通常12月25日から1月1日まで休暇となりますが、今年度は曜日配列の関係で1月3日まで10連休です。12月25日、26日はナイロビに居る人が特に少なくなり、その影響か街で泥棒に遭う確率が高まると言われています。当方の家政婦もカバンをひったくられてしまいました。28日以後、若干人は増えてきましたが、まだまだ休暇中の人が多く、ナイロビ市内はコソ泥を除けば落ち着いた雰囲気です。

さて、今年4月に波佐間前センター長から業務を引き継いで以来、まさに試行錯誤で歴史ある学振ナイロビセンターの運営を行って参りました。この間、数多くの研究者の皆様にご訪問いただき、訪問者の方々から日々勉強させていただきました。7月に長女が出生するなど家庭内にも様々な動きがあり、私的な部分に至るまで訪問者の方に支えていただきました。本来ならご訪問者全員にお礼状を差し上げるところですが、怠慢な小生ゆえ、このサイト上で今年一年のお礼を申し上げること、ご容赦下さい。今年一年、どうもありがとうございました。

来し方から来年のケニアを展望しますと、政治面ではやはり前回総選挙後起こった暴動の処理(国際司法裁判所に任せるかどうか)、マウ森林の保護問題、新憲法の制定が、引き続き議論の的になるでしょうか。このうち、新憲法では大統領制か議院内閣制かという議論が続いていますが、結局折衷案(「ハイブリッド」)が有力と言いつつ、大統領制支持の意見が大勢を占めています。小生はセンターのケニア人スタッフにもよく議院内閣制の長所を説いているつもりですが、どうも当地の人は、大統領制で一度失敗しているにも係わらず、最高指導者を間接的に選ぶことが理解できないようです。正確な住民登録、選挙人登録が不可能な当国では、一票を争って一人の最高指導者を選ぶのは危うい気がしてなりません。それよりも、話し合いで最高指導者を選ぶ議院内閣制の方が、「馴れ合い」があったとしても、政治的混乱を避けるには適していると思われます。それにしても、アフリカの国はどうして大統領制の国ばかりなのでしょうか。どこか他所の国から持ち込まれた権威主義の残滓かしら、と思ってしまいます。

政治面から翻って社会面では、食糧問題が人々の一番の関心事でしょう。旱魃の影響で食糧価格が上昇したと言われておりますが、上昇したまま下がる気配が見えません。旱魃に関しては、依然として降水がなく厳しい状況が続いている地方もあるものの、今回の小雨季では多くの地域で平均的な降水がありました。数ヶ月前はナイロビ市内でよく見たマサイ人の牛たちも、近頃はほとんど見なくなりました。それでも、食糧価格は高止まりです。これはマウ森林問題とも関連するかもしれませんが、「食糧の安全保障」は人口問題、経済問題と切って離せるものではないのでしょう。高い人口増加率と土地不足。もはや農村で人口を吸収するのは不可能に見えます。小生は医療業界の出身ですが、医療の介入によって起こった死亡率の低下と人口増加率の上昇をどこで吸収するのか、難しい問題ですが、医療介入を行うのであれば、その出口戦略も予め練らなければならないと、当地で起こっている現実は教えてくれます。

今回は長期休暇中で、若干の時間があったため、この場に相応しいかどうか判断しかねるものの、昨今のケニアについての小生の思いを書かせていただきました。ケニア人は我々日本人より幸せに生きているような印象を持ちますし、実際そのような研究成果もあるようですが、ともかくも、来年ケニア人が幸せな一年を送れるよう、年の瀬にあたり望むところです。また、来年も訪問者の皆様からたくさんのことをご指導いただければ幸いですし、且つ現地ケニア及びアフリカの方々からも多くのことを学んでいきたいと思っています。事務仕事が多くてと言い訳をしつつ、今年全く執筆できなかった博士論文も何とかしなければなりません。今後とも引き続き、どうぞよろしくお願い致します。

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