更新日:2010/12/19
先の大統領議会総選挙後に発生した紛争に責任を負うとして、12月15日、国際刑事裁判所が被疑者リストを発表しました。
この度の発表に先立ち、在留邦人社会含め現地では、被疑者の支持者らによる反発が懸念され、ケニア治安当局も警戒を強めていたようですが、今のところ大規模な抗議行動は報告されていません。被疑者がおおむね予想の範囲内であったこと、選挙から既に3年の時が経っていることや、もう暴動はこりごりという国民感情も、この度の平穏に貢献しているのかもしれません。ただ、2年後の選挙をにらんで政治家の動きが活発化することは当然予想され、国際刑事裁判所の審理がケニアの政界にどのような影響を及ぼすのか、注視していく必要はありそうです。
話は変わりますが、先日乗ったタクシーの運転手から、息子が今中等教育学校の4年生で成績が思わしくないのだが、日本で技術を学ぶことができないだろうか、と相談を受けました。この時、タクシー運転手のこの質問は、就学率が上がりつつあるケニア更には後発発展途上国の矛盾を一言で言い表していると感じました。先進国や今の新興工業国のモデルでは、教育水準の上がってきた若者を、「金の卵」として都市部の旺盛な求人によって吸収することができたでしょう。ところがケニアには、雇用を大量に生み出し得る製造業が不足しています。教育を推進しても、教育を受けた人材の受け皿がありません。社会から尊敬される、あるいは羨ましがられる職種と言えば、サービス業ばかり。国際機関の存在や観光業、援助等のおかげで何もしなくても大量の外貨が流れ込み、サービス業の人件費はうなぎ登り。サービス業の筆頭とも言える政府系職員等は、貧困層には全く関心ない様子で、常にストライキを警告する。常人の考えでは、「2030年計画」など夢物語だと思ってしまいますが、きっと何事にでも楽観的なケニア人のこと、旧来の開発モデルとは異なる新たな発想で、未来を切り開いていくのでしょう。翻って、工業化によって国づくりを進めてきた我が国の状況は、それを支えてきた製造業を重視しているのか。サービス業に偏重していないのか。他国の状況を見つつ、我が身も振り返る必要がありそうです。
10月下旬に始まった雨季は11月に最盛期を迎え、ラニーニャを根拠とした気象庁の旱魃予測は見事に外れました。おかげさまで水の供給は安定し、快適な日々を過ごしています。12月半ばに入り、きれいに晴れ渡って暑い日が多くなっています。もう大乾季に入ったのでしょう。国立公園では野生動物の子どもがたくさん誕生しているようです。観光シーズンの到来です。